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伊吹先生の著書に見る見識

 先に議員を引退された前衆議院議長伊吹文明先生から、ご著書「保守の旅路」(中央公論新社刊)をご恵贈いただきました。非常に示唆に富む内容でしたので、いくつかご紹介いたします。

●「保守」について

 経済学者ハイエクの「歴史的に形成された制度や慣習といった『自生的秩序』、それらを含むルールによる『法の支配』で自由と秩序のバランスを守りながら、制度やルールの漸進的進化を目指すべき」との指摘に影響を受け、さらにエドマンド・バークの「人は多様な価値観を持っている、したがって自分の価値観を押し付けることは間違いになるかもしれないという謙虚さを持つということ。そして事を決するときに最も大切なのは、長年の試行錯誤の結果として残った伝統的規範であり、この規範は民族の歴史により、おのおの微妙に違う」との指摘から「保守」を学んだ。

●政治改革

 冷静な大局観を持って、制度改正に取り組んでほしい。その時大切なことは、国民主権を預かっている唯一の国家機関である国会こそが「国権の最高機関」であることが担保され、真の三権分立が機能することです。その構成員である国会議員が、資産家の子女や世襲議員だけでなく、だれでも立候補できる条件を損なわないでいただきたい。
 議員になること、その立場を守ることに必要な政治資金は、候補者と有権者である国民との関係で決まってきます。裏金は禁止すべきですが、政治資金を正当に確保し、透明性を持って国民に説明できるかがポイントです。

●財界人

 あの時代の上場企業の経営者は、戦後多くの人が戦争責任もあって一線を退かれたので、若くして経営責任を担われたということもあってか、企業経営にも、政治を含めた公的貢献についても、創業者的勇気と責任感を持っておられたように思います。今の国会議員の経済界の後援者に、一流企業の経営者の名はほとんど見られないようで、時代の流れとはいえ、何か寂しい気持ちがします。

●後継者

 公職なので身内の世襲は避ける、地元京都に地縁血縁のある人、京都ナショナルプロジェクトや財政状況を考えると、中央での人脈、折衝力のある人などの条件を考え、推薦のあった方に後継をお願いしました。

●小選挙区制

 国民の歓心を買うために税負担を避けてバラマキを主張しながら、人の揚げ足をとってスキャンダルを追求し、溜飲を下げさせて得票を狙う「パンとサーカス」の政治の傾向が強くなりました。また公認権を握る党執行部が、有権者に受けが良いと思われる安易なバラマキを行い、国債発行に走った場合、候補者個人としてはなかなか反対意見を出しづらい雰囲気があるのです。
 憲法の基本からもう一度議論して、立法府全体、衆議院と参議院の役割も考え。選挙制度をどうするか、考えるべき時だと思います。

●衆議院の解散権

 憲法69条は、内閣不信任決議案が可決された場合など、衆議院と内閣の意見の不一致を解散の理由としているのです。ですから、郵政解散は、郵政民営化という自説を押し通す権力闘争の強引な手法だと思いました。このあたりから、あからさまに党利党略による解散が堂々と論じられるようになったようです。
 私の大切にする保守の考えでは、憲法7条の天皇の国事行為としての衆議院解散が法解釈で認められたとしても、この権限の行使には、おのずから自制と矜持がなければならないという立場です。

●国会の地位

 三権の長の中で、衆参両院議長だけは天皇陛下の任命が憲法に記されていません。それは大日本帝国憲法と違い、現憲法下では主権が国民にあるからです。主権者が主権を託した国会の投票で選ばれた議長を天皇陛下が任命されるのは、主権の存在が明確でなくなるからだと教えられます。総理大臣は主権を託された国会の氏名を受けての任命だと考えると、国会が国権の最高機関と記されている意味が分かるというものです。

●財政規律

 バークは、「国家は過去・現在・未来という三世代の共同体」という趣旨を記しています。先の世代の残した有形無形の遺産、負の遺産の上に私たちは今を生きており、その中で私たちは何か良きものを加えて、次の世代に受け渡していく。多くの負の遺産を受け継げば、次の世代の日々は困難の連続になります。
 現在の日本は国民の間に奇妙な安心感が広がっていて、自己の価値観に固執し、公共の精神は大事にされなくなっている。現状維持の感覚が広がり、人口減少や財政規律の緩みなどの負の遺産が積み重ねられているように思います。誤りなき選択により、できるだけ負の遺産を残さぬようにしなければと思います。

●政治の矜持

 政治の側が、権力を得るためではなく、「何をなすか」ということを国民の前で堂々と訴え、国民の良識に期待する気概を持つことでしょう。また、国民・有権者側にも麻薬のような国債を気軽に使い続ける怖さを理解していただきたい。
 また、政治家が官僚機構の意見にも耳を傾ける度量、政治に従順かどうかだけで人事を決めないという節度や矜持が求められるのではないかと思います。この度量や節度、矜持を欠くと、政治に忖度して地位を得たり、省益を守ろうとしたりする官僚が出てきます。その結果、財政規律も損なわれると思います。

 以上が、とくに私が感銘を受けたところです。
 さて、自民党の政治資金にかかる問題で、二階俊博衆議院議員が「自らの政治責任を明らかにする」として次期衆議院選に出馬しない意向を表明され、世耕弘成参議院議員には自民党から離党勧告がなされました。皆様に陳謝申し上げますとともに、和歌山県連にとっても誠に残念であり、大変な事態に立ち至ったと言わざるを得ません。
 皆さんの信頼を回復し、期待に沿えるよう県連一同、一致結束して努めてまいります。

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