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可能性の大きい訪日外国人観光(2015年05月18日配信)

■■■   可能性の大きい訪日外国人観光   ■■■

 創業300年を超え、国宝や重要文化財などの補修を手がける株式会社小西美術工芸社の、デービッド・アトキンソン社長の講演を聴く機会がありました。
  アトキンソン氏は伝統産業の経営者ですが、元ゴールドマン・サックス金融調査室長という変り種です。「イギリス人アナリスト日本の国宝を守る」(講談社α新書)を出版され注目を浴び、和歌山市の産業戦略会議の委員も務めています。
 非常に説得力があり有益な内容でしたので概要をご紹介します。

●観光業について

○観光業は、世界的に最も伸びている業種。現在世界のGDPの9%を占めているが、日本ではGDPの2%にすぎない。これを世界水準にすると、約40兆円となり雇用面でも大きな効果がある。

○観光資源の条件は、(1)多様な自然による景色 (2)四季による多様な気候 (3)食 (4)伝統に基づく文化。日本はこれらすべてを備えている。

●日本の観光業の現状

○観光客数、観光業収入ともに、日本は1300万人、150億ドルに対し、フランスの8500万人を筆頭に米国・スペイン・中国は5000万人以上かつ500億ドル以上。タイ・マレーシア・香港でも2500万人以上かつ400億ドルほどであり、日本は非常に少ない。

○現在の訪日観光客はアジアが多く、先進国は少ない。
(1)観光収入は、宿泊・食事が60%近くを占めるが、アジアからは短期滞在が多い。
(2)アジアの観光客は買い物(メイドインチャイナも多い)が中心。一方豪州人は消費型。
(3)豪州人は、どこに行くにも遠いので、宿泊が多くなる。
(4)一人当たり支出では豪州・独・カナダ・英国・仏などの順である。

●今後の課題

○コンテンツの充実
(1)文化財の整備 (2)ビーチリゾート (3)スキーリゾート (4)高級ホテル などの充実を図る必要がある。
その際、「どこの国から何人来てもらうか」などのターゲティングとマーケティングが必要であり、それに基づき期待に応えるストーリー性とガイドなどの整備、さらにお金を使ってもらうための準備が必要である。
○文化財の整備
文化財の整備は維持補修ではなく、「投資」との発想が必要。
保存修理予算の対GDP比率を比較すると、日本0.0017%(約81億円)に対し、英国は0.019%(約500億円)と大きな差がある。ちなみに、年間の京都への外国人観光客数が260万人に対し、大英博物館来場者数は420万人。
また日本と英国では、観光客数は3倍の差、観光業の対GDP比率も約3倍の差がある。
さらに全国的に需要があり学歴も問わないため、若い低所得者の有効な職場となる可能性がある。

○文化財の見せ方
文化財を生かすには、単なるハコモノではなく、そこで行われた歴史ドラマが理解できるような人間ドラマの提示が必要。そのためには、
(1)丁寧な解説やイベントなどのプレゼンテーション
(2)人の流れを考えた、座る場所・休憩所・移動の効率化などの地域デザイン
(3)大規模修理だけでなく、観光客に歴史ドラマの舞台を楽しんでもらい、快適で価値のある場所にすることが必要である。

○目標観光客数
訪日観光客数の潜在能力は5~6千万人であり、国連による増加率1.7倍(2020~2030年)を考慮すれば、2030年に8千万人の目標も可能。
少なくとも現在目標の3千万人ではなく、5千万人にすべき。

●講演を聴いて

○観光業、特に外国人観光客の可能性の高さを痛感しました。それだけに、受け入れ準備をしっかりしていかなければなりません。
現在、政府系研究機関で2020年を目標に、旅行を中心に日常会話レベルを10ヶ国語対応できる多言語翻訳機の開発を進めています。さらに、2030年には対応言語数・翻訳レベルの高度化を目指すことになっています。
また、2018年には準天頂衛星の4機体制が整い、誤差がセンチメートル単位の位置情報が整備される予定で、ナビゲーションの進化で移動などが容易になります。

○文化財修理は、観光振興と地方での雇用の確保の両面から地方創生の柱になりえます。

○観光業が成り立つには、国・地方自治体・民間がそれぞれの役割をきっちり果たすことが必要です。
(1)政府は、明確な目標を公表し、外国人観光客を増やすために法律や制度改正を行う
(2)地方自治体は、魅力ある観光地の整備や情報発信を行って多くの観光客を呼び込む
(3)民間は、美味しい食事や魅力ある土産物、さらには心のこもったおもてなしを行う
以上のように、それぞれが役割を果たすことで、観光が業として成り立ち、地域の活力と雇用が生まれるのです。
これは地方創生のすべての分野に通じる考え方であり、国・地方自治体・民間が
それぞれの役割をきっちり果たすことで地域に雇用を生み、活力を維持していくことが必要です。

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